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タイルづくりの現場から 施釉【番外編】手で描く

わたしたちがつくるタイル、そのつくっている現場の日常を、写真、動画を交えながら、工程を追って順にご紹介しています。
今回は、「施釉」工程の番外編、タイルにフリーハンドで描く、絵付けの様子をご紹介します。

いよいよ来月4月から本格的に販売開始となる、手づくりタイル「絵本」。いったいどのような道具を使って、タイルに絵を描いているのでしょうか。
第3回「施釉編」はこちら

絵本タイル 筆1
絵本タイル 筆2

「絵本」タイルの絵付け、たいていの絵柄はこのような筆を使って描いています。太いものから細いものまで、絵柄に合わせて、いろいろと使い分けます。

絵本タイル使用道具
絵付け用スポンジ

他にも、スポンジブラシ(写真左)や綿棒なんかも使っています。
スポンジの先端、山になった細い面を利用して、線状にスタンプして使ったり…。例えばこちらのタイルがそうです。

絵本タイル
ぽつん」(品番:Potsun-3)

周りを囲んだ線のところ。ちなみに真ん中の”ちょんちょん”とした模様なんかは、綿棒を使っています。筆で描くのとは、ちょっと違った感じになります。

筆を使った様子も見てみましょう。

絵付けの様子

太めの平筆を使って、ぐるりと円を描いていきます。
手回しろくろにのせたタイル素地。そこに絵の具を含ませた筆をおき、片手で少しずつ、リズムよくろくろを回しながら描きます。

絵付けの様子(1年前の試作時とその後)
絵本タイル試作
試作時の様子。道具と絵柄の出来を検討
絵本タイル

こんな絵柄のタイルができました。

「ぴっちゃん」(品番:Pitchan-1)

絵本タイルには、12種類の絵柄があるのですが、それぞれの絵柄にイメージした擬音語を添えています。品番も、その音をそのまま活かして付けています。

企画・開発担当の冨田は
「イメージを言葉にしたもの(擬音語)をまた形にすることで、感覚を確認させられているような行為におもしろさがある」と。

もちろん絵付けも冨田本人が手掛けているのですが、いま、それを後輩スタッフに伝授している最中なのです。
ちょっとその様子を覗いてきました!

絵付け指導
後輩スタッフへ、絵付けのアドバイスを

細い棒は、なんとパスタ。何本か束ねて使います。
すーっと、水の流れを表現しているところは多めに束ねて、水しぶきのところは少し減らしてみたり…
水色の絵の具がすぅっと、素地に吸い込まれるところが見てて面白く、何度も見てしまいます。

絵本タイル
さらさら」(品番:Sarasara-1)

普段から絵を描いたりするということで、絵付けのスタッフとして入社したものの、ろくろを回しながら描いたり、まさかパスタを使って描くとは…と 。。。 (新人スタッフ談)
製作現場に突撃し、カメラを向け、先輩の目もあるという圧力の中で描いてもらったので、筆運び(パスタの扱い…?)にまだ少し戸惑いが見られましたが、日々精進、成長していっているようです。

「絵本」タイルパネル

昨年の建材展では、試作品として出展した手作りタイル。
9月に出展したイタリアの展示会「CERSAIE」の会場でも、各国のバイヤーの目を惹きつけ、多くのお問合せをいただいております。

今年の建材展(~3/15、本日まで開催!)で、この4月から本格的に販売開始する新商品「絵本」として展示しております。
本日最終日ですが、来場予定の方、ぜひ足をとめて実際のパネルをご覧いただければと思います。

建材展へ出展中
「建材展」準備時の様子

タイルパークの新カタログ、2024年度版は4月1日に発刊予定、WEB詳細ページなども、以降、順次オープン予定です。 大変長らくお待たせしております。
また正式発売までは、受注後生産での対応となっております。いましばらくお待ちください!


「絵本」タイルの製作風景

手づくりタイル「絵本」がうまれた背景と、そこにある世界観とは…?
実際の製作の様子とともにご紹介。ぜひご覧ください。

次回は、焼き上げる「焼成」工程についてお伝えする予定です。
原料、成形、施釉と見てきましたが、焼く前の準備から、焼き上がり後までを見ていきます。


▼ 過去のブログはこちらから

第1回「原料編」
https://tile-park.com/blog/detail/26799

第2回「成形編」
https://tile-park.com/blog/detail/27124

成形【番外編】「タタラ成形」
https://tile-park.com/blog/detail/27504

第3回「施釉編」
https://tile-park.com/blog/detail/27860


この記事の執筆者:吉田(タイルパークスタッフ)
カタログやコンテンツ記事などの各種広報物作成を担当。出版・制作会社を経て、転居を機にタイル業界へ。タイルの魅力を模索中。


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普段は入れない、窯の中へ

タイルパークでつくっているタイルは、「トンネル窯」という68mもある長ーいトンネル状の窯で焼いています。 窯の中を、台車に乗ってゆっくり移動しながら、じっくりと時間をかけて焼きあげています。

この中をタイルが移動しながら焼かれます

昨年末、そのトンネル窯の中へ、訳あって入れる機会がありましたので、ちょっと中の様子をご紹介します。
普段は入ることができない、1200度以上にもなる窯の中。いったいどんな風になっているのでしょうか。

出口から覗くと、 トンネル中央付近の炎が遠くに見えます

↑ こちらはトンネル窯の出口。いつもは、こんな感じで焼きあがったタイルが自動で出てきます。

この日、工場へ行くと、いつもとは違うこの光景…。人力で、台車を窯の中へと押し戻しているではないですか!

長いトンネルの入口まで押し戻していく様子

窯の中へ入れるなんて、滅多にないことらしく…、いい機会だったので、工場の方にトンネル窯の中を案内していただきました。

タイルは、窯に入る前に乾燥室で水分を飛ばします。
しっかり乾燥させないと、タイルの中に残った水分が熱せられて、水蒸気爆発を起こしてしまい、タイルは割れて木っ端微塵に。。。

まずは低温の予熱帯(650度くらい)でじわじわと熱を入れていき、その次に1220度の焼成帯へ。
そこを過ぎたら、冷却帯に入り、出口までの間ゆっくりと冷ます。出口付近で、だいたい100度前後までになり、触っても熱くはないくらいになっているそう。

入ってから出てくるまで、だいたい一昼夜、27時間くらいかかります。

上の動画、最後までとくに何も起こりませんが…、ゆっくりと台車が押され、たくさんのタイルが並ぶ様子がご覧いただけます。

焼かれたタイルは、クールダウンしながら、ずらーっと並んで検査を待ちます…。

タイルづくりの現場から 施釉編

わたしたちがつくるタイル、そのつくっている現場の日常を、写真、動画を交えながら、工程を追って順にご紹介しています。
第3回目は、「施釉」工程。
タイルの色付け、釉薬の掛け合わせでできる繊細な色表現に着目します。
(第2回「成形編」はこちら)

ガラス質の釉薬で貫入が入ったタイル(オーダータイル「ヘリテイジ」のサンプル)

タイルは「施釉」と「無釉」、この2つのタイプにわけられます。

タイル表面の釉薬(うわぐすり)の有無による違いで、表面に釉薬が施されているものを「施釉タイル」、釉薬を施さず、素地がそのまま表面となるものを「無釉タイル」といいます。

タイルパークで取り扱っているタイルのほとんどが「施釉タイル」。
施釉により色、色むら、また模様をつけたり、ツヤや光沢をだしたりと、実に様々な質感を表現することができるのです。

さて、工場ではいったいどのようにして、タイルに色をつけているのでしょうか。

プレス機で成形されたタイルの素地に、泥状の釉薬をスプレーしていきます。1つのライン上に、3か所の施釉ブースが設置されています。

こちらが施釉ブース。この写真は点検中で扉が開いていますが、この中をタイルが通っていきます。

このスプレーを使い、綿密に計算・調合した釉薬をかけることで、タイルの顔を表情豊かにつくっていきます。

カラーごとに、ツヤの具合や質感が微妙に異なる「コーン」。
それぞれの色に合わせた釉薬表現がおもしろい

たっぷりの美しい艶をもつもの
きらきらと光るラスター
はたまた、ツヤをおさえ、しっとりと上品でマットな質感のもの。

組絵」風紋、平(マット色)

プレーンでパキッとしたカラーのものあれば

豊富な全10種類のカラー「プランク」(Webリーフレットはこちら

淡くやさしい発色のもの

ほんのりとしたやわらかな色が女性に人気「エルサ」150角 (Webリーフレットはこちら

もわもわっとした模様や、細かな斑点模様。
繊細な結晶もあれば、花を咲かせたような大胆な結晶がみられるものもあります。

日本の伝統的な釉薬を使った「余白」 (Webリーフレットはこちら
表面にランダムな釉薬の結晶 、個性的な形状は海外で人気「プルーム

ここに載せた色に特徴あるタイルは、ほんの一部。TNの工場では、同じ製品でも一枚一枚が違う顔をみせる、そんな焼き物らしさ溢れるタイルをたくさんつくっています。

金色がキラキラと眩しいタイルも、施釉直後は黒だとか…?
「ペルラ-スティングレイ」STI-4

しかし焼かれる前のタイルは、どれもとても、地味…。

施釉直後のタイルはこんな茶色だったり…
こちらは一見何もかかってなさそうな白…
ドロドロした釉薬

こんなドロドロの、決してキレイとは言い難いものをスプレーで吹きつけて、まさかあんな美しいタイルが焼き上がるとは、想像もつきません。

撮影時に施釉していたのは、「」というタイルの、赤(OB-40ENJI)。

タイル素地にまず、一度目の施釉で「化粧掛け」をします。動画にもありますが白っぽい釉薬です。きれいな赤を引き出すために、表面にまんべんなくベースメイクをしてあげます。

二度目の施釉では、ココアのような茶色っぽい釉薬を。こちらも表面全体に均一に掛けていきます。

」渋めの赤(OB-40ENJI) 。ぱっと見はマットですが、見る角度でこんな風にも

なんということでしょう。。。
一昼夜じっくりと時間をかけて焼きあげると、こんな魅力的な色のタイルができあがりました。
「帯」には、黒(KESHIZUMI)金(KOGANE)青(GUNJYO)赤(ENJI)の4色があります。見た感じは金色が一番ゴージャスな感じがしますが、実はこの赤が一番高価。釉薬の原料の価格が高いのです。。。

ちなみに、施釉直後に白っぽかったタイルは、こんな青に焼き上がってきました↓ ↓ ↓

このパキっとしたカラーのタイルは、施釉は2回、どちらも全面に均一に掛ける方法でした。

施釉方法に特徴のあるタイルは、斑点状にかけたり、グラデーションになるようにしたりと、スプレーを調整して変化をつけます。
3つの施釉ブースで、「斑点 → グラデ → 全面」のようにしたり、「斑点 → 斑点 → 斑点」にしたりもあるそう。
さらには、ライン上で3回+加えて手作業でもう1回など、手作業の工程を挟むものもあります。機械だけでは出せない表情は、人の手を加えてあげることが必要。クラフト感のあるタイルになります。

釉薬の変化がみせる繊細な色の表情に注目「大観2
全面→ボカシ→全面 途中で “手作業” での施釉が加わり、この仕上がりに!

均一なカラーのタイルと、色むらやいろいろな模様のあるタイル。
どちらが難しいのか?と聞いてみると、答えは「どちらも難しい」とのこと。均一のカラーでも、100%のできのものあれば、ときには50%のものもでてしまうそう。

それほどに、釉薬の調整はとても難しく、長年の経験から得た知識と、熟練した技術が必要になるのだと感じました。

タイルは “焼き物”
窯に入れる前と後では、まったく違う色にかわる。そこがまたおもしろく、魅力的。
焼きの「焼成」工程については、また次回以降にお伝えします。


▼ 過去のブログはこちらから

第1回「原料編」
https://tile-park.com/blog/detail/26799

第2回「成形編」
https://tile-park.com/blog/detail/27124

成形【番外編】「タタラ成形」
https://tile-park.com/blog/detail/27504

Tile Manufacturing Factory by TN Corporation (タイル工場 ダイジェスト)