黒、にこだわったハンドメイドタイルが魅せた
日本らしい「美」(「陰翳」施工例紹介)
高級ホテルを思わせるかのような雰囲気の、この一角。
実はここ、オフィスビルのエレベーターホール。
一枚一枚を手作業で作り上げる特注タイル「陰翳」(いんえい)。
格子(こうし)、石畳(いしだたみ)、鱗(うろこ)、矢羽根(やばね)の、4つの形状があります。
どれも日本の伝統的な模様ですが、先にご覧いただいた写真は、三角形を交互に並べて連続させた文様の「鱗」。
古くから三角形には魔除けの力があるとされ、「鱗を落として脱皮する」という意味で、厄落としや厄除けに使用されたとか。また蛇は脱皮を繰り返して成長することから、「再生」の意もあるそう。
鱗は、金(KOGANE)の方に厚みをもたせて作っており、高低差で影が強く現れ、よりはっきりと模様が際立ち、金釉が印象強く目に飛び込んできます。
築50年以上のビルのリノベーションで、各階のエレベーターホールにそれぞれ違う4種類の「陰翳」をご採用いただきました。どの文様がどんな雰囲気に仕上がるのかを、一同にご覧いただけます。
「格子」(こうし)
格子模様とは、縦縞と横縞が交差している模様のこと。
正方形や長方形を格子状に並べたデザインは、上下左右に途切れることなく続き、終わりのないイメージであることから、「永遠」や「繁栄」の意味を持つ縁起の良い柄と言われています。
格子は、さきほどの鱗とは逆で、長方形部分の黒(KESHIZUMI)の方を少し厚めに作っています。陰翳でこだわった「黒」、で組んだ格子。その文様を強く感じます。
細かなパーツが垂直に組み合わさり、きちんと並んだ格子模様ですが、ひとつひとつ手作りのピースに趣が感じられ、味わい深い仕上がりになっています。
「石畳」(いしだたみ)
色違いの正方形を交互に並べて構成される文様のことをいい、別名は市松(いちまつ)模様とも呼ばれる石畳。
陰翳では、正方形と長方形を組み合わせてアレンジ。
長方形を斜め45度に組み合わせたものを檜垣(ひがき)、別名で網代(あじろ)といい、代表的な幾何学模様のひとつで、床の間や和室の天井などによく使われているのですが、この文様の要素も感じます。
タイルパークでも、45度に回転し斜めにした模様の施工イメージを掲載していますが、この垂直に並んだパターンもいいですね。
トントントン、と、金の正方形タイルが、リズミカルに並びます。
「格子」と「石畳」はユニット仕様の「陰翳セレクト」もご用意。割付けや施工もしやすい仕様になっています。
例えば、
「住宅にアートパネルのように少しだけ使ってみたい 」― など。
特注となると少しハードルが高いな…、と感じられる場合でも、ご検討していただきやすいのではないでしょうか。
それとは逆に、かなり広い面積の案件でも、陰翳セレクトならCADデータとシームレス画像もご用意していますので、割付け、概算も可能です。
CADデータ提供サービスは >>> こちら
「矢羽根」(やばね)
矢羽根は、矢の上部につける鳥の羽を表した文様。弓矢には魔除けの意味があるそうで、まっすぐ前へ進み「的を射る」矢は、古くから縁起物として用いられてきました。
着物の柄でよく見かける矢絣(やがすり)がありますが、それとは違う矢振り柄。大胆なギザギザ模様を描きます。こんな柄のニット、ありますよね。
陰翳タイルの他の3つのデザインと比べて、ちょっとモダンな感じがします。
平行四辺形を斜めに組み合わせていくので、施工の難易度はかなり高いのですが、きれいに仕上げてくださいました。
中央のボタンの部分がメタリックなので、どの形状もその中央部分に金色をもってこないよう、うまく工夫されています。
「陰翳」の魅力は、こだわりの鈍い発色の黒と、神社や寺院を思い起こさせる古色を帯びた金。この奥行きのある味わい深い2つの色と、一枚一枚粘土を板状にワイヤーカットしてできる特有の凹凸のある表面、そこからうまれる立体感と陰影。
通常の量産タイルにはない、手作りでしかできないシャープなエッジも見どころ。
訪れる機会がありましたら、ぜひいろんな時間帯で見ていただきたいと思います。
陰翳の中に日本の美を感じる陶壁
―「陰翳」
エレベーター待つ間も、贅沢な時間に演出してくれることでしょう。
参考:
日本の内装材料辞典「日本の文様 伝統文様」
https://naisouzairyou-annai.jp/pattern/tradition/index.html
販促クリエイト.jp「日本伝統文様「和柄」」
https://www.hansoku-create.jp/rp/wagara.html
nippon.com「日本の伝統文様」
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00478/
物件名:グラン姫路
設計:株式会社リオ・コンサルティング
施工:株式会社エムケイファイブ
ハンドメイドによるオーダータイル「陰翳」
詳しくはこちらのWEBブックをご覧ください
>「陰翳」WEBブックを見る
施工例紹介ページでは、両脇に使われたタイル「ぺルラ-禅」の写真もご覧いただけます。
> 施工例紹介ページはこちら