タイルづくりの現場から 「土練機」でつくる湿式タイル

わたしたちがつくるタイル、そのつくっている現場の日常を、写真、動画を交えながらご紹介しています。
今回工場でみてきたのは、「土練機」を使ってつくる湿式製法タイルの成形作業。
土練機=どれんき、と読みますが文字通り土を練る機械。空気を抜きながら土を練り、板状に粘土を押し出してタイルの形にする機械です。

土練機

私たちの工場でつくるタイルのほとんどは「乾式製法」なのですが、もうひとつ、この真空土練機を使った「湿式製法」のものがあります。

▼ 乾式製法での成形の様子は、こちらの第2回「成形編」をどうぞ
https://tile-park.com/blog/detail/27124

乾式製法は、水分を飛ばしてサラサラの顆粒状の原料を、プレス機でギュッと押し固める製法です。焼成後の寸法精度も高く品質も安定しており、比較的低コストで大量生産が可能となります。

一方の湿式製法は、水分を含んだ「粘土」の状態から成形をおこないます。基本的にはこの土練機を使いますが、手で粘土を捏ねたり切り出したりといった成形方法も湿式製法になります。

上の写真は、土練機からでた粘土の板を、正寸にカットする前に粗く切り分けたもの。これぞ粘土!という感じですね。

土練機では、成形するのにちょうどいい硬さになるまで、水を少しずつ加えながら練り合わせ、粘土の水分量を調整していきます。この時空気が混ざらないように真空状態で練り合わせ、練った粘土から空気をしっかり抜いて、板状に粘土を押し出します。

今回作っているのは100角タイル。
焼き上がりは97mmを目指し、素地は109.5mmにカットします。
湿式製法のタイルは含水率が高いので、焼成による収縮率が乾式製法のものより大きくなります。

土練機から出た粘土を、まずはざっと切り分けます。

粘土の切り分け

だいたいの大きさに切り分けたら、手動のタタラ成形機で整えていきます。

ならした後の粘土

2本の回転するローラーの間に、必要な厚みよりも厚い粘土を通し、表面をならしつつ厚みも均一にしていきます。

四隅をカット

この後、109.5mmの型紙を使って、四隅を切り落とします。
何枚も何枚も、手作業なので大変です。

成形完了

画像ではわかりにくいのですが、少し布目のついた素地ができました。さきほどの手動でくるくると回して使っていた、タタラ成形機でタイルに被せていた布の跡です。

この湿式タイル、まだまだこの後に表面加工の工程が続きます…。一枚一枚、非常に手間のかかるタイルです。
担当のスタッフが協力し、 試行錯誤しながらがんばっています。

わたしたちの工場をはじめ、数多くのタイルメーカーが集まるこの地域。ですが、かつてたくさんあった湿式タイルを生産する工場は減少。
そんな状況の中、この土練機、 実は今年に入ってから新たに入れた設備なのです。

粘土を成形して、焼き固める。
昔からあるシンプルな製造方法である湿式製法には、土の持つ魅力がいっぱい。
大量生産ラインでは生み出せない「人の手の温もり」と「素材そのものの美しさ」を表現することができます。

今では、3メートルも超えるようなとても大きな、しかも薄い、そんなタイルがどんどん増えています。ダイナミックで美しい見た目、それに加え耐久性やメンテナンス性にも優れ、ホテルや、商業施設、オフィスビルなど、需要も多い。

確かにかっこいい。でも…

こんな時代の風潮の中ではありますが、 一枚一枚に味のある風合い豊かなタイルが、もっと身近にあるような、そんな空間が求められてもいいのでは、と感じます。
実際にタイルが焼き上がってくる現場を見ていただけると、その魅力を見出すきっかけがたくさんあるかと思います。


▼ 「タイルづくりの現場から」
過去のブログをまとめました!タイルはどんな風に作られていくのか。
成形、施釉、焼成… それ以外も?!
ぜひご覧ください。
https://tile-park.com/index.php/blog/detail/31422


この記事の執筆者:吉田(タイルパークスタッフ)
カタログやコンテンツ記事などの各種広報物作成を担当。出版・制作会社を経て、転居を機にタイル業界へ。タイルの魅力を模索中。


■関連商品のご紹介■

ダンボ

ダンボ
240×60サイズの湿式製法のタイル。
白とグレーの2色。 濃淡をつけたミックスになっています。
その色幅がなんともかわいい!

→「ダンボ」を見る

■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
カットサービス
カットサービス
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

街並みの雰囲気に見事にマッチ

東奔西走~タイル旅 vol.8

タイルパークの(株)TNコーポレーション、デザイン室の渡辺です。
タイルが使用された建物をいろいろ巡る企画、
「東奔西走~タイル旅」です。
建築に関わる方の何らかの参考になれば幸いです。

今回は東京、下北沢のタリーズコーヒーさんを訪ねました。

『タリーズコーヒー 下北沢店』

少し前に「東奔西走~タイル旅 vol.5」にてご紹介した
渋谷アクシュ店さんとはまた違った雰囲気です。

大きなぬいぐるみのクマさんの足が・・

床に使われている白っぽい600角のタイルは
「ヌサドゥア CCN-60-22」というタイルで
やや古びた感じのコンクリートの風合いがあります。

使用タイル:ヌサドゥア CCN-60-22

下北沢は若者に人気のエリアですが、
レトロでどこか懐かしい雰囲気もあるため、
このタイルの古びた感が、いい味を出している気がします。
街並みの雰囲気に見事にマッチ・・

床にはもう1種類、黒っぽい(ダークグレー?)の
600角タイルが使われています。
お店の中央を白っぽいタイル、
これを挟むように黒っぽいタイルが使われています。

この黒っぽい方のタイルも
使い込まれたセメントの風合いをイメージした600角タイルです。

使用タイル:ブルー&ホワイト CE66034RG

ちょっとわかりにくいのですが、
このお店ではカウンターの後ろ(キッチン)の
壁にもタイルパークのタイルが使われています。
艶消しの白いタイル(150×75角)です。

使用タイル:サブウェイ-マット DMW-1501M

今日もやっぱり、タリーズさんで
私が選ぶのは
「エスプレッソシェイク」一択!
本当に昔から好きなんです・・
ほろ苦くて、大人のシェイクという感じです。

タイルを採用してくださった設計の方、
施工いただいた職人さん、
タリーズコーヒージャパン株式会社 広報の方に
心から感謝いたします。

写真協力:タリーズコーヒージャパン株式会社
店舗名:タリーズコーヒー 下北沢店
https://shop.tullys.co.jp/detail/5563184


この記事の執筆者:渡辺(タイルパークスタッフ)
タイルパークでお客様からの問合せ対応やコンテンツ作成を担当 。妻、娘、ペットのインコと仲良く暮らす50代。綺麗なものと動物が好き。


■関連商品のご紹介■

ヌサドゥア CCN-60-22
コンクリートの風合いをもつ内装用の床・壁兼用600角タイル。

→詳細を見る

ブルー&ホワイト CE66034RG
使い込まれたセメントをイメージした壁・床用600角タイル。モダンデザインやレンガタイルとも相性抜群。

→詳細を見る

サブウェイ-マット DMW-1501M
スタンダードなタイルとして大人気の「サブウェイタイル」のマットカラー。汎用性の高さはそのままに、ツヤ消しならではのしっとりとした触り心地と上品な美しさが魅力です。

→詳細を見る

■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
カットサービス
カットサービス
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

美味しいご飯をいっぱい食べて、美濃焼をゲットしよう!

こんにちは、タイルパークスタッフの山中ヴァルガと申します。私の今までの記事ではいつもハンガリーについて書いてきましたが、今回はたまたま手に入れた焼き物をご紹介したいと思います。

それはファミリーレストラン「ジョナサン」でいただいた美濃焼の小皿です

グレーと黄色コスモスの花の模様がある小皿

「ジョナサン」の秋のプレゼントキャンペーン

「ジョナサン」の秋のプレゼントキャンペーンについてご紹介します。株式会社オンワードコーポレートデザインと株式会社すかいらーくレストランコラボレーションし、10月3日にスタートした「美濃焼小皿&泉州タオルハンカチプレゼント」というキャンペーンです。

キャンペーンの第1弾では、ジョナサンで店内飲食税込2,500円以上のお客様に、サイズ約12cmの美濃焼小皿をプレゼントしています。お皿は青と黄色の2色があり、どちらか1枚がもらえます。私はグレー黄色のお皿をいただきました。

左にはグレーと黄色コスモスの花の模様がある小皿があります。隣に小皿の白黄色紙ボクスがあります。

11月7日からプレゼントされる第2弾では、泉州タオルハンカチが貰えます。デザインや色は小皿と同じです。

小皿のデザインについて

ご存じの方も多いと思いますが、美濃焼は岐阜県の東濃地方で作られている伝統工芸品です。このお皿の模様はコスモスの花をイメージしたオリジナルの北欧デザインだそうで、本当に可愛く、使いやすいお小皿です。

黄色コスモス花の模様がある小皿に塩あじのおかしいが置いてあります。
ちょっとしたお菓子に使うのがちょうどいいです。
グレーと黄色コスモスの模様のある小皿は窓の前のテーブルに置いてあります。お皿にパンがあります。

弊社のタイルも美濃焼?

美濃焼は、岐阜県の東濃地方で制作された陶器の総称で、600年以上の歴史があります。 時代に合わせて新しい技法や釉薬を採用し続けてきた美濃焼は、日常使いの食器から芸術作品まで多彩なバリエーションがあります。 実は、タイルパークも美濃エリア(岐阜県可児市)に本社があり、ここで伝統的な焼き物を基にした、国内外で競争力のあるタイルの一部が作られています。美濃焼は、その独自の模様や色合いが評価され、国内外の多くのファンに愛されています。 自社商品の中には、ハンドメイドのシリーズ(例えば絵本や陰翳)や、ヘリテイジというセミオーダーシリーズがあります。

チェックのテーブルクロースにタイルに似ているグリーンお皿があります。お皿にチーズケーキとアイスのようなクリームがあります。

お皿やタイルなど、毎日の生活で使う便利なものとして何気なく使ってしまいますが、それらを作られる背景に思いを寄せて見ると、物の良さがもっと伝わると思います。


この記事の執筆者:山中(TNコーポレーション 東京ショールーム担当 )
ハンガリー出身、2022年に仏教の研究で修士号を取得。2022年秋に来日。日本の文化や日本での生活を学びながら陶器とタイルの良さを味わい中。


■関連商品のご紹介■

絵本

美濃地方の白い土を成形した画用紙のような白い素地に、時折滲む絵の具を使って水や雨を連想させるデザインを施し、絵本のようなやさしい世界を持たせました。住宅や店舗の壁に取り入れてほしいアートタイル。

→「絵本」を見る

ジャパンホームショー出展のご案内

ジャパンホームショー出展のおしらせ 見出し

11月20日~22日に開催されるジャパンホームショーにて、同時期開始予定の新サービス「割付TEプレカット」のご紹介をいたします。サービスの内容をまとめたガイドブックなどもご用意しておりますので、新サービスにご興味のある方は、是非ブースにてスタッフにご質問ください!

展示会概要

Japan Home Show & Building Show

第46 回 Japan Home Show & Building Show 2024

会期:2024年11月20日(水)~11月22日(金)
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)東展示棟1~2
ブース番号:2-E10

新製品、隠れた名品、業界トレンドが一堂に会する
日本最大級の建築プロのための展示会

⼯務店、ハウスメーカーおよび設計・デザイン事務所のほか、建設会社、ディベロッパ⼀、リフォーム会社など建築に関わるプロが来場する⽇本最⼤級の建築に関する専⾨展⽰会です。
公式ホームページはこちら >

来場予約について

ご来場には事前の申し込み(無料)が必要となります。下記ページよりお申し込みください。
来場予約フォームへ >

案内状をご希望の方

ご案内状の郵送も可能です

ジャパンホームショーの案内状の郵送もおこなっております。ご希望の方はメールにてお気軽にご依頼ください。
(※案内状をお持ちの場合も、来場の事前申し込みは必要となりますのでご注意ください) 案内状の郵送を希望する > 送信先:shop@tile-park.com
(※郵送先の郵便番号・住所・お名前をお送りください)


新サービス「割付TEプレカット」のご紹介

割付TEプレカット ロゴ

今回弊社はタイルパネル展示はございませんが、代わりにホームショー開催と同時スタートを予定している新サービス「割付TEプレカット」のご案内、ご説明をおこないます。

割付TEプレカットとは

割付TEプレカット 概要

「割付TEプレカット」は、洗面台バックスプラッシュのCAD割付けと、タイル注文時にプレカット、副資材の少量パックをオプションで購入できるタイルパークの新サービスです。

面積的にはわずかしかない洗面台。それでも、タイルの割付けや数量拾いの手間はあるし、タイル職人の人工があまり変わらないことを考えると、案外コスト高に感じている方もおられるかもしれません。

タイルパークでは、そんな洗面台タイル仕上げの「ちょっと面倒」をお手伝いすることで、世の中にもっとタイル仕上げの魅力的な洗面台が増えてほしいと考え、今回このサービスを立ち上げることになりました。

割付TEプレカット 概要2

サービス開始記念キャンペーンも計画中

「割付TEプレカット」開始後しばらく記念キャンペーンとして、通常3,000円程度のCAD割付けと、面積により費用が変わるプレカット料金を、それぞれ無料でお試しいただける期間を設ける予定となっております。

展示会会場では、タイルパークのスタッフによる詳しいサービスのご説明や、サービス内容をまとめたガイドブックを配布予定。もちろんカタログ・サンプルの送付の受付や、タイルについてのご案内などもOKです!

タイルパークの新サービスに興味がある方、洗面台のタイル仕上げをよくおこなう方は、ぜひ足をお運びくださいませ。

※ご来場には事前の申し込み(無料)が必要となります。下記ページよりお申し込みください。
来場予約フォームへ

タイル割付けは奥深い

タイルパークでは現在、住宅内で最もタイル使用率の高い「洗面台」のタイル仕上げを後押しするべく、新サービスの準備をおこなっています。

洗面台とキッチンは、住宅の中でもお施主様(とくに女性の方)がこだわりたい場所のツートップ。なかでも洗面台は、ミラー下のごく小さなスペースだからこそ「デザインにこだわりたい」「遊び心を取り入れたい」という方も多いのではないでしょうか。

とはいえ工務店の方などにお話しを伺ってみると、じつはこの僅かなスペースのタイル施工で頭を悩ませることも少なくないようです。様々なケースがあるものの、大きくは「四角形以外のタイルになると割付けが難しい」ことと、「省スペースほど施工のコストが高く感じる」ことが多いようでした。

割り出し方ひとつで変わるデザイン

事前にタイルを割付けることで、施工に必要な枚数や切り物のサイズを確認することができます。また割り出し方を先に決めておけば施工のときにも迷うことなく、仕上りも事前に想像ができるので、施工担当にも指示が出しやすくなります。

心割り(中心から割り出す割付け)の場合、タイルの中心からスタートするか、目地からスタートするかでも仕上りが変わってきますね。どちらの方がキレイに仕上がるかは、施工面・タイル寸法・目地幅の関係で変わってきますので、一概にどちらとは言えないところが難しいです。

タイル心割り
目地心割り

詳しくは下記のページもご参照ください。
「タイル割付け、キホンのキ」 >

さて今冬よりタイルパークでは、洗面台のバックスプラッシュにおける「タイルの割付け」と、その割付け内容で「プレカット」まで一緒に注文できる新サービス「割付TEプレカット」を発足予定です。

割付けや数量拾いといった部分は原則弊社ではおこなうことができませんが、少量だからこそなるべく手間を省きたい洗面台のタイル仕上げをお手伝いすることで、コーディネーター様や工務店様にとって便利なサービスとしてご提供したいと考えております。
(※新サービスの対象範囲外については、これまで通り割付けや数量拾いはお客様にておこなっていただく必要がありますので何卒御了承ください)

現在運用開始にむけて内容を詰めたり、シミュレーションをおこなっている段階ですが、実際の現場寸法にあわせてタイル割付けをするというのは、私たちが考えていた以上に気にかけなければならない点が多く、奥が深いものでした。

特殊な形状は切りものだらけ

タイルパークで販売している中でも、とくに変わった形状の「ピノグリ」や「レトロ」といったタイル。

直線の目地が通る部分が無いこれらのタイルは、基本的に収まり部分のタイルをカットする必要があります。

ピノグリの標準割付図

上記は参考割付図からの引用となりますが、場合によっては、こんなギリギリの切りもの(収まり部分に使用するカットしたパーツ)が出てきてしまったりします。
小さい切りものはカットするのがかなり難しく、破損したり斜めになってしまったり、はては折角切れても現場で迷子になってしまったり・・・。

タイルにあわせて施工場所の寸法を決められる場合は、極力半マス(真ん中でカットしたタイル)で納めるのが仕上りもよく効率的です。しかし、とくにリフォームの現場においては元々施工面が出来上がっているため、そうはいかない場合が多いかと思います。その際も、なるだけ大きめの切りもので納められるように、割出し位置を微調整するのが良いですね。

割り出し位置の調整について、以下に事例をひとつ。

以前弊社で「フィン」の割付をさせていただいた際の、初期割付図の施工面右側です。

フィンの割付け_その1

斜線の引かれた部分が切りものです。細長い三角形の、いかにも折れやすそうな切りものや、紛失しやすそうな小さな切りものがたくさん入っています。
「とくに下部に入っている細長い三角形の切りものは、カットの衝撃に耐えられないだろう」という判断となり、割り出し方を変えてみることになりました。

フィンの割付け_その2

修正案がこちら。できるだけ切りもののサイズが大きくなる場所を模索し、初案よりはだいぶ破損のリスクが低減できそうな割付になりました。

頼みの綱のコーキング

先にお見せした「フィン」の事例の修正案。よく見ると切りもののサイズ確保と引き換えに、上下のコーキング幅が非常に大きくなっていることもわかります。

施工面の寸法もタイルの寸法も変わらない以上、どこかで帳尻を合わせるしかないですが、そんな時は思い切って、周囲のコーキング幅を多めに取ってしまうのも一つの手です。

コーキングで収められたタイル

うまく割付けられないときの逃げ道として、コーキングは少し余裕を持っておくのがベターです。
これは、ギリギリの幅で割付けてしまって、いざ施工のときにタイルや現場のわずかな歪みで収まらなくなるというトラブルの回避にもつながります。
バラのタイルや表紙張りユニットなら、接着剤が硬化するまでに微調整することもできますが、ネット貼り商品はそうもいかないので、特に気を配る必要があります。

仕上りを左右するもの

とはいえ見た目の良し悪しにも影響するので、通常なら5mm程度におさえたいコーキング。上記のフィンの割付けでは「上部はタイルをカットしたくない」というお客様からのご要望もあり、試行錯誤の結果、最終的に上下とも11.6mmものコーキング幅が空いてしまいました。

最終的なフィンの割付け

何かを優先するなら、何かを諦めるしかありません。タイルの仕上がりとしては少々格好悪いですが、これはもう、コーキングでぎゅぎゅっと埋めてもらうしかないか・・・。
施工を担当する業者さんにも了承を取ってもらい、このサイズのままプレカットをおこない納品させて頂きました。さて現場での施工の結果がどうなったかというと・・・

施工完了後のフィン

こちら、施工後に送っていただいた写真です。あれ!?上下の極太コーキングが見当たらない!?

写真をギリギリまで拡大したところ、どうやら広すぎるコーキング幅を逆手にとり、見切り材を入れていただけたようです。ちょうどシルバーの見切り材が引き出しやキャビネットの取っ手とも一致して、結果的にとてもまとまりのある仕上りになっていました。

割付は、あくまでCADで引いた数値上の結果。今回の施工の際にもやはり寸法誤差などがあったそうですが、そこは施工の方がしっかり調整をおこなってくださっています。実際の仕上がりのクオリティを左右するのは、やっぱり現場にいる職人さんの知識と経験なのでした。


この記事の執筆者:金谷(タイルパークスタッフ)
タイルパークの商品情報管理やWEBサイト更新を担当。学生時代に学んだ陶芸の知識を活かし、タイル商品の魅力を発信。


■関連商品のご紹介■

フィン
海外からやってきたユニークな形状のガラスモザイクタイル 。一定間隔でまっすぐ通る目地があるので、うまく割付ければ現場で難しいタイルカットを最小限に留めることも可能です。

→「フィン」商品情報へ

■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
割付TEプレカット サービス
割付TEプレカット
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

キラキラ感が凄い!天然貝殻のタイル

東奔西走~タイル旅 vol.7

タイルパークの(株)TNコーポレーション、デザイン室の渡辺です。
タイルが使用された建物をいろいろ巡る企画、
「東奔西走~タイル旅」です。
建築に関わる方の何らかの参考になれば幸いです。

今回は丸い柱に弊社のタイルをご採用いただいた
店舗さんを訪ねました。

円柱の柱への貝殻タイル1
円柱の柱への貝殻タイル2

訪ねたのは
アインズ&トルペ Carrot St. SANCHA店』さん

webサイトには、
「国内外のコスメを中心に、ビューティケア、ヘルスケア商品まで、 からだの中から外から美しくなる、幅広く専門性の高い品ぞろえと、 最新コスメトレンドを発信するコスメショップです。」
・・とあります。

円柱の柱への貝殻タイル3

店舗を訪れたさいの第一印象は、
お店全体が清潔感と華やかさでキラキラしていて、
50代のおじさん(私)がいるのは
ちょっと・・場違いな感じがしましたが、
しばらく待っていると同僚の女の子が来てくれたので、
ホッとしました。

円柱の柱への貝殻タイル4
円柱の柱への貝殻タイル5

このタイルは天然の貝殻をスライスして作られたタイルです。
釉薬を用いて発色させる焼き物のタイルとはまた違った、
パールのような発色が魅力です。
お店の雰囲気にもとても合っていて、嬉しく思いました。

使用タイル:カノーザ MS001-15

円柱の柱への貝殻タイル6
店舗の雰囲気

タイルを採用してくださった設計の方、
施工いただいた職人さん、
ご協力いただけた店長さんをはじめ、
掲載許可をくださった株式会社アインホールディングス様に
心から感謝いたします。

写真協力:株式会社アインファーマシーズ
店舗名:アインズ&トルペ Carrot St. SANCHA店


この記事の執筆者:渡辺(タイルパークスタッフ)
タイルパークでお客様からの問合せ対応やコンテンツ作成を担当 。妻、娘、ペットのインコと仲良く暮らす50代。綺麗なものと動物が好き。


■関連商品のご紹介■

カノーザ MS001-15
貝殻から作られた、天然の輝きをまとう装飾用モザイクタイルです。天然貝ならではのまばゆい美しさで、住宅内装・店舗内装のどちらでも存在感を発揮します。

→詳細を見る

■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
カットサービス
カットサービス
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

古くて新しい 焼き物、タイルのまち

良質な原料、陶土に恵まれ、古くから「美濃焼」の産地として栄えてきたこの地域、岐阜県の東濃地方。
なかでも多治見市は、モザイクタイル発祥の地と言われ、モザイクタイルミュージアムをはじめ、岐阜県現代陶芸美術館のあるセラミックパークMINO、美濃焼ミュージアムなど、焼き物に関する施設やギャラリー等がたくさんあります。

多治見の街なかを歩いていると、昔ながらの喫茶店や飲食店、美容院や雑貨店なんかのお店はもちろん、普通のお宅の外壁にもかわいいタイルや、かっこよくて渋い、ステキなタイルが目に入ってきます。

床屋の青い外壁タイル
2種類の緑のタイル

休日の朝にぷらっと散歩していたのですが、個人のお宅を勝手に撮影するのもあれなので…ビルや店舗のタイルを中心にご紹介します。

多治見駅すぐ南側にある「ながせ商店街」。
このながせ通りにある、商店街の新しい顔が「ヒラクビル」さん。

ヒラクビルの外壁タイル

昔は時計や宝石・メガネを扱うお店だったそう。レトロでいい雰囲気の外観。
リノベーションされ、本屋さんやカフェが入って、シェアオフィスやレンタルスペースなんかも。
建物の中、これがまたタイル好きにはたまらない仕様になっています。まだ営業時間前だったので、残念ながら中の様子は詳しくご紹介できませんが、「ひらく本屋」「喫茶わに」で調べてみてください。素敵なタイルがいっぱいでてきますよ。

画像引用元:@hiraku_bldg ヒラクビル

確か、本を喫茶スペースに持ち込みOK。タイルいっぱいの空間で、ゆったりとお茶を飲みながら読書。すてきなときが過ごせそう。

ヒラクビルのタイルシンク

ビルの片隅には、可愛らしいタイルシンクが!赤い金魚タイルを一目見て、これは…と。あとで調べてみると、やはり「作善堂」さんのタイルシンクでした。
写真のようなカラフルでポップな色使いのタイルシンクをよくみかけますが、シンプルなものもあります。ときどき、作善堂さんのタイルシンクを見つけると、タイルパークのタイルどこかに使われていないかな? と、思わず探してしまいます。

突如あらわれた、タイル張りの可愛らしい三角屋根の小屋。

タイル張りの三角小屋

小屋の中には本が少し置いてあり、「まちなかほんだな」とあります。

三角小屋「まちなかほんだな」

ここにある本は自由に持ち帰っていいそう。
読まなくなったけど、誰かに呼んで欲しい、そんな本を次の人へつなぐ、すてきな場所でした。

三角小屋のタイルアップ

様々な黄緑色、幅も2種類ミックス貼りされています。置かれていた植物と屋外の空間に、よく馴染んでいました。
写真を撮り忘れてしまったのですが、床の正方形のタイルもいい色でした。ちょっと黄色や茶色が混ざった芝生みたいな色合いの、色幅の大きなタイルが張ってありました。

通りを1本入るとレトロな小さなビル。

レトロなビルのタイル

1階は美容院。自宅兼、店舗でしょうか。
よーく見るとこのタイル、なんと虹色に光っているではないですか!

レトロなビルのタイルアップ

遠くからなんとなく見ただけだと、オフホワイトかグレーのような感じだったので、よく気にして見てないと、うっかり通り過ぎてしまうところでした。
手前ではなく、奥の柱の部分を見てもらうと、紫、ピンク、黄色、オレンジ、緑、水色…、いろんな色が入っているのがよくわかるかと。

私の実家(お隣の愛知県)も美容院なのですが、うちの外壁は45角のプレーンな白のマットなタイル…。
ここはさすが焼き物のまち、使うタイルがひと味違います。こだわりを感じますね。

一方でこちらは床屋さん。

床屋の青いタイル

青。
なかなか見ない、濃く、強い青。
藍色、縹色(はなだいろ)? なかなか見ない男前な青色が目を引きました。
面状は、ラフな面状の2種類ミックスですね。


ちょっと休憩 ―。

おりべかっぱ広場

商店街の中に突如あらわれた大きな「かっぱ」。。。
「おりべかっぱ広場」とあります。多治見市に伝わる河童伝説にちなんで、かっぱの像がお出迎えしてくれます。

おりべは、美濃焼の一つ「織部焼」の「おりべ」。
織部焼といえば、この特徴ある深い緑色。その織部色したかっぱの焼き物でした。さきほどの三角小屋のタイルも、織部の緑っぽいタイルがありましたね。

ながせ商店街の中でシンボル的な存在、Y字路に建つこの建物。

モザイクの陶壁
モザイクの陶壁アップ

カラフル!
こんな陶壁も、モザイクタイル発祥の地、多治見ならではですね。

カラフルといえば、こんな虹もありました。

モザイクタイルの虹
モザイクタイルの虹アップ

モザイクタイルでてきた、とても可愛らしい虹。
さっきの壁と違って、近寄って見ることができるので、ぜひ見つけて間近で見て欲しいです。1枚1枚に、いろんな釉薬の表現が見えて、面白いです。

古いけどなんか新しくて、新しいけどなんだか懐かしい、そんなタイルが溢れる街中。古くからある建物も、新しい大きなビルにも、いろいろな顔をしたタイルが見られます。
商店街をでて、ちょっと街中から離れたところを車で走っていても、 いろいろな タイルが目に入ってきますよ。

地域のゴミステーションまでもが、タイルアート!

ゴミステーション
ゴミステーションごとに、テーマのあるタイルアートで装飾

地元愛・タイル愛の溢れるボランティア団体の方が、地元タイルメーカーから無償で提供されたタイル(廃番品など)で、殺風景なゴミ置き場を美しく装飾されています。


「土と炎」の看板

帰り道…、いつも気になる大きな看板?
多治見市街地から少し北の方を望むと、山の上に、「土と炎」の巨大な赤い文字。(ちょっと写真がわかりにくいですが…)
岐阜県県東濃西部総合庁舎の外壁で、「国際陶磁器フェスティバル美濃」のPRのために描かれたものだそう。
「土と炎の国際交流」をイメージし、「炎」の字は縦約6メートル、横7.7メートルの大きさもあるそうです(参考:朝日新聞デジタル)。

今年もこの季節がきました。
国際陶磁器フェスティバル美濃’24

国際陶磁器フェスティバル美濃

日本を代表する陶産地である岐阜県多治見市・瑞浪市・土岐市・可児市を舞台に、1986年から3年に1度開催している世界最大級の陶磁器の祭典。
メインイベントの「国際陶磁器展美濃」は、世界中の国と地域の作品が一堂に会す展覧会です。
美濃焼の歴史や魅力、地域の風土を存分に感じ、楽しむことができる、4市の陶磁器産業・地域・文化に密着した事業も多数開催!

【開催期間】
2024年 10月18日(金)~ 11月17日(日
【メイン会場】
セラミックパークMINO 展示ホール(岐阜県多治見市)


今週末開催!こちらもぜひ
たじみ陶器まつり

たじみ陶器まつり

” たじみ陶器まつり” は、多治見市内で年二回開催されるやきもののお祭りです。先人達に感謝を込め、出店者と来場者のみなさん、地域のみなさんが一緒になって盛り上げるお祭りです。

第81回 たじみ陶器まつり 秋
【開催期間】
2024年 10月13日(日)・14日(月・祝)
【メイン会場】
多治見美濃焼卸センター(岐阜県多治見市)

「春」は本町オリベストリート、「秋」は多治見美濃焼卸センターと、秋季開催の会場は少し街中から離れた陶磁器商社が集まる場所。
「本町オリベストリート」は、多治見駅から徒歩10分ほどの、レトロな町並みでおしゃれな焼き物のお店がいっぱいのスポット。
まちなかでアートを味わう「まちなか美術館」が、12~14日に同時開催されます。

先にご紹介した「ながせ商店街」と一緒に、多治見、焼き物の街めぐりを、ぜひ。


この記事の執筆者:吉田(タイルパークスタッフ)
カタログやコンテンツ記事などの各種広報物作成を担当。出版・制作会社を経て、転居を機にタイル業界へ。タイルの魅力を模索中。


■関連商品のご紹介■

湿式タイル「北野」

北野(きたの)
焼き物らしい味わいのボーダータイル 。RCY-02あたりは、ブログ前半でご紹介した「三角小屋」にあったタイルのような雰囲気、ちょっと渋みのある黄緑色。
緑が3色ありますが、どれもオススメです!

→「北野」を見る

■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
カットサービス
カットサービス
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

令和6年能登地震・豪雨災害の影響について

いつもタイルパークをご利用いただき誠にありがとうございます。
この度の災害により被害に遭われた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。

災害の影響により、とくに被害の大きい石川県輪島市・珠洲市の一部地域宛てのお荷物について、運送会社での引受休止となっている場合がございます。
商品を出荷できないお客様へは、メールにて個別のご連絡を差し上げておりますので予めご了承ください。

また配達再開となった周辺地域におきましても、途中の道路事情により大幅な配達の遅延が発生しております。

お客様には誠にご不便をおかけいたしますが、何卒御理解・御了承を賜わりますようお願い申し上げます。

出荷済みのお荷物の配送状況については、追跡用のお問い合わせ番号をメールでご案内しておりますので、各運送会社の追跡サービスからご確認ください。

▼西濃運輸
https://track.seino.co.jp/kamotsu/GempyoNoShokai.do

▼日本郵便
https://trackings.post.japanpost.jp/services/srv/search/input

被災地の1日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
タイルパーク スタッフ一同

ハンガリーの浴室タイルトレンド(2024)

東京ショールーム担当の山中です。今回は私の母国ハンガリーの浴室のタイルのトレンドについてご紹介したいと思います。

ミニマルタイル

ハンガリーではバスルームのデザイントレンドがよく変わります。

基本的にハンガリーの浴室タイルは模様なし水色や青いタイルでした。しかし、近年シンプルでミニマルなバスルームのデザインへの関心が高まっています。なぜかというと、ミニマルなデザインはリラックスできる雰囲気を演出できるからです。この理由で2024年には落ち着いた色合いのセラミックタイルが人気です。

デザインだけでなく、白い浴室のタイルは、さまざまなレイアウトの背景としても実用的で、今後トレンドが変わった時でも簡単にバスルームのデザインを変更できます。

洗面台と便器が写っている。白いタイルで壁一面が構成されている。

また、正方形、四角形 、六角形のタイルはインテリアにモダンでダイナミックな個性を与えてくれますので、浴室や他の場所にもよく使われています。

浴室タイルの模様

先に述べた、パターンタイルだけではなく木製タイルなど大型セラミックタイルも人気です。

花模様や80年代の雰囲気を醸し出すタイルもおしゃれです。 バスルームやキッチンは、家庭内で頻繁に訪れる部屋です。ホテル、レストラン、サロンでも、魅力的な花柄がお客様に新鮮な魅力とトレンディな印象を与えることができるので、タイルメーカーも今年注目しているトレンドです。

小さな便座と洗面台が写っている、壁は白いタイル。足場にはヨーロッパ風の模様が施された四角いタイルが敷き詰められている。
10枚のタイルの表面がアップで写されている。カラフルな幾何学模様がプリントされている。
写真:Terrakotta Csempecentrum Webサイト(https://lakberinfo.hu/cegkatalogus/ceg/terrakotta-csempecentrum/

ヨーロッパの浴室タイルのトレンド

模造天然石タイルと小型の床タイルはハンガリーだけではなく、全ヨーロッパで流行っています。ハンガリーと違って、他のヨーロッパ(例えばドイツ)には白やベージュのタイルだけではなく、ディープブルー、グリーン、さらにはテラコッタなどの大胆で鮮やかな色のタイルも人気があります。

浴室の壁に水色ヘキサゴンタイルが貼ってあります。床の一部にも同じタイルが貼ってあります。湯船の後ろの壁に白い正方形タイルが貼ってあります。
写真: Dune Ceramics Webサイト
https://duneceramics.com/en/blog/bathrooms-with-blue-tiles?fbclid=IwY2xjawFi1PdleHRuA2FlbQIxMAABHRZvDexaLg_khspOWcWod40c3PS1GgzmcBjO6W-Ojm581JUnWQOJAbKc7A_aem_Gk83r0YGL7dGBCmdxbSgpg

理由としてはバスルームの良いアクセントになり、フレッシュな空間を作ることが可能だからです。他の特徴としては、大型セラミックタイルや変わった形のあるタイルに関してはハンガリーと共通です。

2024年はもうすぐ終わりますが、来年の流行のタイルはどんなタイルになるのでしょうか?


この記事の執筆者:山中(TNコーポレーション 東京ショールーム担当 )
ハンガリー出身、2022年に仏教の研究で修士号を取得。2022年秋に来日。日本の文化や日本での生活を学びながら陶器とタイルの良さを味わい中。


■関連商品のご紹介■

組絵セレクト【鱗片】

組絵の膨大なバリエーションの中でも、特に人気の高い色と形の組み合わせを便利な裏ネット張りユニットで販売。連続パターンだけでなく、平セレクトとの併用もオススメ。店舗デザインやハイエンドな住宅内装で立体感のあるインテリアづくりをお手伝い致します。

→「組絵セレクト」を見る

歴史の息吹を伝える「文化のみち橦木館」

名古屋では江戸から明治、大正の時代にかけて様々な産業が発展し、日本の近代化を推し進めました。名古屋市東区のエリアには、そんな近代化に貢献した当時の起業家たちの旧邸宅や、遺産価値のある古い建物が今でも大切に保存され、時代の息吹をいまに伝えています。
「文化のみち」と呼ばれるこれらのエリア。その中に佇む、近代ロマンに溢れた「橦木館(しゅもくかん)」を訪れてみました。

静かな住宅地に佇む橦木館

訪れたのは、猛烈な残暑が続く9月半ば。いかにも名古屋らしい、車の多い大通りでバスを降りると、日傘の健闘も虚しくたちまち汗が噴き出してきましたが、橦木館を目指して一歩内側の通りへ入ると、公園の木々がつくる木陰がホッとひと息つけさせてくれる閑静な住宅街に変わります。
しばらくすると、海老茶色の屋根瓦がかわいらしい洋館が見えてきました。

橦木館の外観
橦木館の看板

塀にかけられた木の看板には「文化のみち 橦木館」と書かれています。
看板だけ見るとまるで道場のようですが、赤レンガが導く先にはとてもレトロなエントランスがありました。アールデコ調のデザインがおしゃれな建物に向けて、ドキドキしながら進みます。

橦木館正面
赤煉瓦の敷かれたポーチ

玄関に到着すると、扉のまわりには格調高い陶磁器製のタイルが貼られ、ステンドグラスがはめ込まれています。 重厚感があって素敵ですね。

橦木館 洋館の玄関扉まわり
玄関扉周辺

和洋ふたつの顔をもつ邸宅

名古屋市指定有形文化財であるこの「橦木館」は、明治の後半から陶磁器の輸出貿易で大成功をおさめた実業家・井元為三郎(いもと ためさぶろう)の旧邸宅です。
海外へも複数の支社を出すなど、世界を股にかけて活躍した為三郎。大正末期から建築を始めた和の邸宅に、後から洋館部分を増築し、海外からのゲストを招待していたそうです。

建物は現在の正面入り口にあたる洋館と、その奥に続く和館で構成され、広い庭には茶室もあります。まずは洋館の2階に上がってみます。洋館自体はそれほど大きな作りではなく、宿泊者が快適に過ごせるようにトイレ・お風呂・寝室がコンパクトにまとまっています。
なお旧寝室は現在貸室になっており、この日は残念ながら中を見ることはできませんでした。

橦木館 洋館2階のバスルーム
バスルーム

バスルームです。欧米のゲストを意識してか、トイレと浴槽が同じ部屋に配置されています。壁や床、浴槽まわりには、タイルが沢山貼られています。

橦木館 洋館2階娯楽室
娯楽室

隣の娯楽室に入ると、目に飛び込んでくるのが素敵なステンドグラス。広縁越しに差し込む光をうけて、とても美しいです。

広縁

広縁には趣きのある机とロッキングチェア。腰壁に貼られたレンガがとってもおしゃれです。

広縁部分床のタイル

足元を見ると、海老茶色とクリーム色のタイルがヘリンボーンで貼られています。このカラーリング、そういえば建物の外観(壁と屋根)と同じ組み合わせですね。

窓越しに見える和館

部屋の窓からは、奥にある和館が見えています。一階に降りて、次はあの和館を目指します。

和館の縁側
和館の縁側

コンパクトなつくりの洋館とは打って変わって、こちらは庭に沿って長い縁側が続く、日本らしい平屋の建物になっています。奥にペンダントライトが見えますが、ガラス戸に中庭からの光が差し込んでいるため、灯りが無くてもとても明るいです。

和室
和室

ゆったりとした和室が続いています。欄間を見ると、鳳凰(かな?)が彫りこまれています。井元為三郎が酉年生まれだったことから、建物のあちこちに鳥のモチーフが取り入れられているのだそう。

脱衣所
脱衣所の洗面台

こちらは和館側の浴室の脱衣所。床、壁、洗面台の周囲までタイルが張り巡らされています。

橦木館の和館は大正15年(1926年)に竣工したそうですが、日本では1918~1921年にスペイン風邪が大流行したことから、世の中の衛生観念が劇的に高まり、公衆浴場ではタイルなどの衛生的な仕上材を使うことが定められました。それはやがて住宅にも普及し、日本における水まわりのタイル仕上げが一般化していくきっかけとなりました。
この時代の実業家の邸宅は欧米風の建築デザインを取り入れることが多いため、近代的な住宅建築の先駆けとも言える建物が多く、現存するものは大切に保存されていることが多いようです。

シャワーブース
シャワーブース

シャワーブースがあるのはなかなか珍しいですね。こちらも150角くらいのタイルが貼られています。見切りの役物に、各国を飛び回って世界のタイルを見てきた井元のこだわりが見て取れます。

デザインは少し異なりますが、タイルパークの商品で再現するなら、SUW-150SUB-Aがおすすめです。

陶磁器輸出で大成功をおさめた井元為三郎

井元為三郎の肖像画
井元為三郎

洋館2階に飾られている、タバコを手に微笑む男性の肖像画。この方が邸宅のかつての主、井元為三郎です。

名古屋市に生まれた為三郎は、10代の頃から陶磁器業界に入り、23才の若さで陶磁器加工問屋「井元商会」を創業しました。
名古屋には近代以降今なお第一線のブランドであるノリタケやTOTOなどを擁する、セラミックス業界のトップランナー・森村組(現在の森村グループ)があり、陶磁器産業が非常に盛んな地域でした。 そんな名古屋の地で、井元商会はいち早く販路を海外へと拡大して大成功。のちに為三郎は名古屋陶磁器貿易商工同業組合長にも就任し、名古屋陶磁器会館を建てるなど、名古屋のさらなる経済発展に貢献しました。

カップソーサー
盛んに作られたカップソーサーは現在でも大人気。
ノベルティ
ノベルティ(陶製人形)。なんだか祖母の家にあったような気が…。
井元商会の集合写真
本社前で撮影された集合写真

井元商会の人々。二列目中央に立つのが井元為三郎です。この写真を見ると若い人が非常に多く、前列には丁稚奉公と思われる幼い子どもたちが揃いの法被で並んでいます。今の時代には考えられないですが、当時は子どもたちも立派な働き手。若い力に支えられたエネルギッシュな会社だったことが伝わります。

「文化のみち 橦木館」は大人200円、中学生以下だと無料で見学することができます。旧応接室を利用したカフェも併設されており、美しい中庭を眺めながら飲むお茶が格別でした。また時期によっては展覧会やイベントもおこなっているとの事です。

さらに橦木館の近辺には、日本初の女優と呼ばれる川上貞奴(さだやっこ)の旧邸宅「文化のみち 二葉館」や、同時期に活躍していた様々な実業家たちの邸宅が残されており、洋館好きや歴史好きの方には、歩いているだけでも楽しいエリアになっています。名古屋を訪れた際には、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

文化のみち 橦木館
名古屋市東区橦木町2丁目18番地
開館時間 午前10時から午後5時
休館日 月曜日(祝日の場合は直後の平日)、年末年始(12月29日から1月3日)
橦木館ホームページ


この記事の執筆者:金谷(タイルパークスタッフ)
タイルパークの商品情報管理やWEBサイト更新を担当。学生時代に学んだ陶芸の知識を活かし、タイル商品の魅力を発信。


■関連商品のご紹介■

サブウェイ
時代を超えて愛される、ベーシックなタイルの代表格。豊富な役物をうまく組み合わせれば、欧米風のおしゃれなデザインに。

→「サブウェイ」を見る
→この施工例を見る


■おすすめサービス■

無料タイルサンプル請求
無料タイルサンプル請求
割付TEプレカット サービス
割付TEプレカット
Webカタログ一覧
Webカタログ一覧

在庫予約サービス
在庫予約サービス
CADデータ提供サービス
CADデータ提供サービス
よくある質問
よくある質問

Just another WordPress site