タイルを選ぶとき、まずは「色」、で探すという方が多いと思います。
「タイルの色」=「釉薬(ゆうやく)」
焼き物であるタイルの色は、とても細かな釉薬の調合によってうまれます。
ここでは、日々のタイル製作現場でおきている、色開発の舞台裏を、何回かにわたりご紹介しております。
前回は様々な質感の「白」タイルをご紹介しましたが、今回は質感、それと、機能性に着目してみます。
前回のお話はこちらから >>>「白って200色… いや、もっとあります」


性能とデザインと、それを叶える「砂」
発売直後から高い反響をいただいているこの2つのタイル。
「伝統釉」
「ハツボーダー」
どちらも粗い原料がつくり出す豊かな表情が特徴。レトロな焼き物の風合いで人気をあつめています。
どちらの商品も海外のお客様からの引き合いも多く、「ハツボーダー」は、タイルパークではこの4月に発売、いったん入荷はしたもののすぐに出てしまい、ほぼ在庫がない状態が続いております…(申し訳ありません。次回入荷までいましばらくお待ちください)


この2つの商品は、素地=タイルそのものの生地にやや粗い原料を使用しており、タイル表面にも自然な凹凸や斑点があらわれています。

こんな感じで、 裏も側面も全体にツブツブとした砂、自然な土の素材感があります。
釉薬部屋をたずねてマイスターに聞くと、この黒いツブツブは、山からでる鉄分を含んだ砂だそう。普段使っているベーシックな原料より、高価なものになります。
それと、土のブレンドも、ただ混ぜればいいというわけでなく、高度な技術が必要だそうで、ここは専門の業者さん(陶料会社さま)にお願いしています。
ただ砂を混ぜるのではなく、理想の表情を出すために、『造粒(ぞうりゅう)』という粒を育てる技術で粒子をコントロールするのだそうです。そして、その粒子を粘土や釉薬の中に美しく定着させるために、『バインダー(結合剤)』という目に見えない糊の調合も必要なのだとか。
綺麗な発色を促す白い土が、とても高価で希少というのは聞いていましたが、なんとこのツブツブでザラザラの原料をつくるのも、とても技術が必要だと知りました。そして白い土と同じように高価な原料らしいです…(ボソッ)

【なぜ造粒するのか?】
均一な表情を作る:
粉末のままだと、焼成中に原料同士が混ざりすぎてしまい、理想の点在(砂の粒々感)ができない。あらかじめ「造粒された粒」にしておけば、焼き上がった際にもその粒が溶けずに残り、狙い通りの「砂の表情」が再現可能
性能の安定:
防滑性を持たせる場合、粒の大きさがバラバラだと滑りやすさにムラが出る。造粒によって粒のサイズを揃えることで、高い防滑性能を安定して発揮させることができる
コスト:
専用の機械で粉を球体にする工程が加わるため、時間と手間がかかる。また、粒の強度も重要で、成形時に潰れず、焼成時に溶けすぎない「絶妙な硬さ」を作るための配合技術が求められる
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【バインダー(結合剤)って?】
成形のつなぎ役:
「粗い砂や骨材」を混ぜる場合、粘土と砂がうまく馴染まないと、タイルがボロボロと崩れてしまう。バインダーを加えることで、成形段階でしっかり形を保つことができる
焼成までのサポート:
焼成前(乾燥状態)のタイルは非常に脆いが、バインダーが粒子同士を繋ぎ止めることで、窯に入れるまでの移動や積み込みに耐えられる強度を与える
重要なポイント:
焼成温度に達すると、バインダーの成分は焼き飛ぶか、釉薬の一部として溶け込む必要がある。そのため、ただの接着剤ではなく、「焼成の邪魔をしない」という高度な材料選択がプロの技
原料ひとつとっても、こうしたミクロな技術の積み重ねから生まれているんですね。
さて、原料について長々と書いてしまいましたが、このブログは「釉薬」の裏話でした。ではそろそろ、本題へ…
下の写真、ツブツブした感じに仕上げた試作バリエーションですが、実は、素地の原料は通常のままのものがあります。さて、どれでしょうか?
正解はーーーーー
こちら…
★動画が入ります(砂あり様々手前IMG_7408.MOV)
これ、「釉薬」に「砂」を混ぜたパターンです。
隣のセージ色(きみどり色)のタイルと同じような見た目ですが、
この白のタイルは、ベースは通常の素地で、釉薬に「砂」を混ぜて表現したパターンです。

通常の素地 
右のタイルは粗い原料が混ぜてある
上の写真、左の白のタイルは通常の素地、その右隣りのタイルは素地に粗い原料が混ぜてあるものです。
また後日、釉薬マイスターのところをたずねると、バリエーション豊かな白のツブツブ試作タイルが並んでいました。

★動画が入ります (白の釉薬ツブツブIMG_7383.MOV、白の釉薬ツブツブup_IMG_7387.MOV
そもそも釉薬の原料自体が、「長石」「珪石」「灰や石灰」などの鉱物の粉末や土だったりするのですが、そこに、少しだけ粗い砂の粒を混ぜて吹き付けます。
前述のとおり、砂を素地に混ぜ込むのは、素地にかかるコストがかなり高くなってしまう。しかも、不良も出やすいとのこと…。
素地に混ぜ込む場合だと、偏析(へんせき)と言ってプレス時に、成分が均一にならず部分的に偏ってしまう現象がおきると、砂が固まったりして素地の強度が落ちてしまうそうです。
釉薬に混ぜた方が生産も安定、いろいろと見た目のバリエーションも、表現の可能性も広がります。
★動画が入ります (新島砂IMG_7264.MOV)
素地に混ぜる砂のひとつを見せてもらいました。
新島は、東京から南へ約150km〜160kmの太平洋上に位置する、伊豆諸島の島。

★動画が入ります(素地に砂の焼成後(新島?)IMG_7267.MOV)
ここで採れる「新島長石」とも呼ばれる石は、ケイ素やガラス成分を多く含んでいるそう。この成分を生かして作られるタイルは、硬く、水を吸わず、耐久性も高いそうですよ。
そう、突然ですが、夏といえばプール!
海外向けの商品ですが、こんな真っ青なプール用のタイルも作ってますよ。
★動画が入ります(プールタイルIMG_7379.MOV)

滑り止め用に、アルミナ(Al₂O₃)という原料を釉薬に混ぜています。
★動画が入ります (ニッケイランダム表IMG_7261.MOV、ニッケイランダム裏IMG_7262.MOV)
こんなやつです…(慌てていて中身の撮影忘れました)
表面を細かくボコボコさせて凹凸をつくり、滑りにくい仕様に仕上げたタイルです。機能面での「砂」の使い方ですね。これも、釉薬に「砂」を混ぜて施釉し、機能性をもたせたパターンのタイルです。
「素地から作る」という選択肢:
伝統釉やハツボーダーのように、土そのものの表情を活かすというアプローチ。揺るぎない質感をうむ
「釉薬で調整する」という可能性:
表面の質感を自由に変えられるというアプローチ。柔軟な対応力で広がる可能性
どちらが良い、とかではなく、現場のニーズや、実現したい空間に合わせて、砂の活かし方を使い分けて、さまざまな試作を繰り返しています。釉薬チーム 『glaze lab.』(グレイズラボ) では、今も、新しい『砂』の使い方を実験中です。


砂は、タイルに命を吹き込む ——–
「砂」といっても、その表情は千差万別。
私たちが選ぶのは、単なる素材ではありません。防滑という性能を突き詰めるための「硬質粒子」や、釉薬と反応して美しい色彩を生むための「鉱物粒子」など、一つ 一つ が選び抜かれたプロフェッショナルな素材たちです。

粒子の細かな粒度をコントロールし、どの素材を、どの分量で、どのように焼くのか。その緻密な計算と、素材の個性を引き出す職人の知恵と、炎の力があって、タイルは暮らしを支える「機能と美の結晶」へと姿を変えます。
たかが砂、されど砂…。
素材に向き合い、その可能性を極限まで引き出すこと。タイルメーカーである私たち「TNプロダクト」、釉薬チーム『glaze lab.』の挑戦は今日も続いています。













