こんにちは!ハンガリー出身で、現在日本で営業として働いている山中ヴァルガ・アンナです。今日は、私の故郷と深い繋がりのあるオーストリアの歴史と、美しいインテリアにまつわるお話をお届けします。特に、18世紀のヨーロッパで流行した陶磁器やタイルが、どのようにして貴族の邸宅や宮殿を彩ったのかに焦点を当てます。

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東洋磁器の流行とウィーン陶磁器工房の誕生
18世紀のヨーロッパでは、中国や日本から伝わった東洋の磁器が大ブームになっていました。その独特な白さや繊細な絵柄に多くの人が魅了され、王侯貴族たちは競ってコレクションしていたそうです。その影響で、ヨーロッパ各地に模倣を目的とした窯元が次々に生まれました。1718年にウィーンで設立されたウィーン陶磁器工房もそのひとつで、ヨーロッパで2番目に古い歴史を持つ窯元です。
ただ、華やかな流行とは裏腹に、工房の経営は非常に厳しく、1744年には廃業の危機を迎えました。そんなときに登場したのが、オーストリアとハンガリーの女王であるマリア・テレジアです。彼女は工房を国営化し、自らも積極的に注文を出して支援したのです。
マリア・テレジアの美意識とタイル文化の広がり
この支援をきっかけに、ウィーン陶磁器工房は息を吹き返し、「マリア・テレジア」シリーズと呼ばれる優雅で繊細なデザインの作品が誕生しました。私はこのシリーズを初めて目にしたとき、その気品ある花柄に一瞬で心を奪われたのを覚えています。あの優雅な曲線と淡い色使いは、時代を超えても色褪せない美しさです。

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彼女の美意識は、ウィーンのシェーンブルン宮殿にも表れています。私が訪れた際、その豪華さに圧倒されましたが、特に印象に残っているのが、陶磁器やタイルで飾られた空間の繊細さです。装飾に使われた花や風景が描かれたタイルは、壁や暖炉のまわりにあしらわれていて、空間にやさしさと豊かさを加えていました。

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ウィーン陶磁器工房がタイルを製造していた記録はないものの、当時は「ファイアンス」と呼ばれる装飾用の陶器タイルが貴族の邸宅に使われていました。そのタイルは、見た目の美しさだけでなく、耐火性や耐久性にも優れていて、インテリアにおいて非常に重要な役割を果たしていました。

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ハンガリーへの影響と私の気づき
マリア・テレジアの美的感性は、ハプスブルク家を通じてハンガリーにも深く根付きました。実際、私も子どもの頃から、ハンガリー国内の博物館や歴史的建造物でこうした陶磁器やタイルの装飾を目にする機会がたくさんありました。でも当時は、ただ「きれいだな」と思うだけで、深く考えることはありませんでした。
しかし、今こうしてインテリアに関わる仕事を通じて改めてその歴史や背景を知ることで、自分の国や文化の中に流れる美意識の深さに気づかされます。あの時なんとなく眺めていたタイルのひとつひとつに、時代を越えた想いが詰まっていたのだと思うと、少し誇らしく、そして温かい気持ちになります。これらは私たちの誇りです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。歴史的な背景や美意識がどのように私たちの生活に影響を与えてきたのかを考えると、非常に興味深く感じます。
この記事の執筆者:山中(TNコーポレーション 東京ショールーム担当 )
ハンガリー出身、2022年に仏教の研究で修士号を取得。2022年秋に来日。日本の文化や日本での生活を学びながら陶器とタイルの良さを味わい中。
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