釉薬の色の裏の話…その6 「白って200色… いや、もっとあります」


タイルを選ぶとき、まずは「色」、で探すという方が多いと思います。
「タイルの色」=「釉薬(ゆうやく)」
焼き物であるタイルの色は、とても細かな釉薬の調合によってうまれます。
ここでは、日々のタイル製作現場でおきている、色開発の舞台裏を、何回かにわたりご紹介しております。

前回のお話はこちらから >>>「色だけじゃない、釉薬で模様も作れる?!」





無限の表情を生み出す、焼き物の「白」





灰釉を使ったさまざまな白いタイル




フチがほんのり色づいたれリーフタイル




「白っちゅうのは、200色もあるんやて」

あの方の有名な名言、この辺り(岐阜・美濃地方)の方言にあわせて少しアレンジしてみました。
ところで、焼き物であるタイルの「」ですが、200色どころか、もっと無限にあります。

「何言っとりゃーすか、もっとよぉーけあるわ」(美濃弁Ver.)

しょっぱなから少々脱線してしまいましたが。。。
この言葉の通り、陶芸における「白」を表現する釉薬は、原料の配合、焼成温度、酸化・還元といった雰囲気、さらに下地の土の色によって無限の表情を生み出します。

今回も釉薬マイスターが、その「白」のバリエーションに思いを馳せて、さまざまな試作を作ってくれました。
白のニュアンスは主に「質感(ツヤ or マット)」と「乳濁具合」によってバリエーションが生まれるそうです。





いろいろな白いタイル




乳濁具合って…?
焼き物における「乳濁(にゅうだく)」とは、釉薬(うわぐすり)が焼成時に完全な透明にならず、光を散乱させて白っぽく(または淡い色合いに)濁る現象や状態のこと。
乳濁は、単に「色を白く塗る」のとは違い、ガラスの内部で光がどう跳ね返るかによって作られるため、独特の「奥行き感」や「柔らかさ」を表現するのに欠かせない、やきものの重要な魅力の一つです





代表的な「白」の釉薬の種類

白マット釉:艶消しの落ち着いた白。マット感のある柔らかい印象

藁白(わらじろ)釉 : 藁の灰を使った、乳白色で柔らかく、少し厚みのある白。藁白釉は「白」の代表格

乳白釉(乳濁釉): 透明釉に濁り成分を加え、不透明に白く濁らせたもの。安定した白

萩釉(白萩): 萩焼特有の、少し透け感のある乳白。土の風合いが透けて見える

青白磁(せいはくじ): ほんの少し青みがかかった、ガラス質の透明感のある白

錫(すず)白釉: 錫を原料に用い、鮮明な白色を出す釉薬













陶芸における「白」、を現す釉薬をいくつかあげてみました。
このなかで、「灰」「灰釉」に着目してみます。

2番目に挙げた藁白釉。「藁(わら)の灰」とありますが、稲わらを焼いたものが「藁灰」なのですが、天然の藁灰は今や非常に希少で高価なため、産業製品であるタイルや現代の陶芸においては「合成わら灰」(調合わら灰)が主流になっています。





合成の灰釉の原料




昔ながらの「稲わら」を燃やして灰にする作業は、手間も時間もかかります。現代の農業では稲わらをそのまま田畑に還元したり、別の用途に使ったりすることが多いため、釉薬用の純粋な藁灰を集めるのは困難。
また、産地や収穫時期によって成分が変わるため、同じレシピで焼いても「前回と色が違う」ということが起こりやすく、大量生産には向きません。





★動画でどんな粉かわかるやつ





合成わら灰」は天然藁灰の成分構成を分析し、長石、珪石、石灰、リン酸カルシウムなどの鉱物原料を精密にブレンドして再現したものです。

品質の安定性
成分が常に一定なので、大きな窯で焼くタイルなどでも色ムラ(ロットぶれ)を最小限に抑えることができる

コストパフォーマンス
鉱物資源を主材料とするため、天然灰に比べて圧倒的に安価で、安定供給が可能

環境への配慮
本物のわら(天然わら)を燃やす際に出る煙や有害物質の削減や、貴重な資源・伝統の保護という観点からの「環境(サステナビリティ)」への配慮

さまざまな理由で、合成わら灰を用いてタイルの「白」を表現しています。
天然由来の成分バランスを忠実に再現した釉薬を使用することで、伝統的な藁灰の温かみを残しながらも、現代の建築に求められる高い品質安定性を実現しています。

また、「合成土灰」というものもあります。
これらは釉薬のベースや調合に使われますが、狙う「仕上がりの質感」によって明確に使い分けられます。

1. 合成わら灰
狙う質感…白く濁った仕上がり(乳白色・不透明)
主な用い方
・温かみや柔らかさのある「白」を表現したいとき
・あえてムラ感やポッテリとした厚み(ニュアンス)を出したいとき
・洋風・和風どちらのインテリアにも馴染む、素材感のあるタイルのベース

2. 合成土灰(どばい)
狙う質感 … 深みのある透明感(オリーブグリーン・茶褐色・透明)
主な用い方
・下地の粘土の色や凹凸を活かした「透明~半透明」の釉薬を作るとき
・いわゆる「織部(おりべ)」や「黄瀬戸(きせと)」のような、焼き物特有の深みや「渋み」を出したいとき
・タイルのエッジ(端)に色溜まりを作り、アンティークな陰影を出したいとき

灰釉 】(カテゴリー)
  │
  │ ── 天然灰釉(薪や稲わらを実際に燃やした灰がベース)
  │
  └ ── 合成灰釉(天然の成分を鉱物で再現したもの)
     │ ── 合成わら灰(白く濁るタイプ)
     │ ── 合成土灰(透明~緑・茶に溶けるタイプ)





合成の土灰とわら灰
手に持っている上のツヤツヤした方が「土灰」




白く濁らせたいなら『わら灰』
透明感や渋い色を出したいなら『土灰』
と覚えておくとわかりやすいです。





灰釉を使ったさまざまな白いタイル




白いタイルのフチに出た色のアップ




あと、灰釉系の釉薬は「流れやすい」という特徴があります。
灰はある添加量で高温で溶けると、重力に従ってスッと流れるような表情が出やすいです。この「流れ」が、器の底部に溜まって厚みを作ったり、釉だまり(ビー玉のような溜まり)を作ったりして、深い味わいを生み出します。

タイルでは、起伏のあるデザインの場合、釉薬が流れることで凹凸に濃淡が生まれ、単一な白ではない「立体感」や「揺らぎ」を表現するのに非常に適しています。





★組絵MVI_4199.MP4 縄文もくっつけるか?
凹凸で色の出たところ、わかりやすく 動画で





「組絵」シリーズのなかの”鱗片” (りんぺん)というタイルです。
このタイルを使った施工例イメージをAIで作ってみました。





「組絵」鱗片 、左がツヤあり、右がマットの白。真ん中は試作カラー




生成AIによるイメージ
※生成AIによるイメージ画像




鱗(うろこ)模様が、部分的に少しだけ間違って再現されてしまいましたが…
光の反射も控えめなセミマットの白は主張しすぎず、少しだけフチに現れたブルーが、デコラティブなデザインの中にもすっきりとしたモダンさを。オフィス空間にやすらぎを与えてくれそう。





生成AIによるイメージ
※生成AIによるイメージ画像




こちらは、「縄文」というシリーズのなかのくさび型模様のタイルでもイメージをつくってみました。ゴールドのフレームや大理石、間接照明、そして香水瓶やバッグが並ぶハイエンドな高級ブティックやクローゼットのようなシチュエーション。タイルのシャープな幾何学ラインが引き立ちます。

もうひとつ試してみました。
プラハ」という、形状・面状が豊富な商品があるのですが、これがどんな感じになるのか、試しにこれも生成AIを使い色を表現できるか試してみました。









「アイスグレイズ」な質感、とか
透き通るような「ミルキーシアー」カラー
といった表現が合うでしょうか?

レリーフの溝に釉薬が深く溜まることで、まるで手仕事のような陰影のグラデーションが生まれて、こんな感じになるかな?と(あくまでも想像ですが)
優美なきらめきが、ホテルのサニタリーや上品な店舗空間に、クラシカルで贅沢なひとときを添える、そんな1枚になるのでは。









このレリーフボーダー、 冒頭でも写真を載せていますが、ツヤのタイプとマットなタイプ、釉薬マイスターが8色ずつ作ってくれました。





★フェーミナのツヤとマットで動画





ツヤツヤなのは「アイス」「ソルベ」「シャーベット」
マットは「ミルキー」「シュガー」「淡雪」
あま~いお菓子ばかりですが、ちょっとそんな言葉が合いそうなイメージ。とってもかわいい。そして美味しそう。。。





下地にベースとなる色「カラー」を敷いて、上から灰釉系の白い釉薬を流したパターンを見てきましたが
少し長くなりそうなので、次回に続きます。
「白」は奥が深いですね…