フランクロイドライトの帝国ホテル NO.9 外観
<外観>
これまでこの名建築の各部分を取り上げてその魅力を書いてきましたが、最後に全体の外観を取り上げてみます。
先回も書きましたがこの建物の平面計画は川の字を横にして東西方向に並べたプランになっています。
3本の棟のうち南北の2棟は客室棟で、3階建ての軒高は西から東まで同じ高さになっています。
一方中央棟は色々な機能を持った空間が収められていますが、西端の池から始まり、ポルトコシエ(車寄せ)、エントランスロビーと順番に軒高をリズミカルに 高くし東端のバンケットホールが最も高くなっています。
池からロビーまでが第1楽章、ダイニングルームが静かな第二楽章、プロムナードがメヌエットの第三楽章、そしてオーディトリウム、バンケットホールがフィ ナーレの第4楽章と言った劇的な構成になっています。
次の画像はそのレイアウトがよくわかる、日比谷公園上空からの写真とパース図です。
日比谷公園から見る西側の景観は建物の規模にしては前景のロビーが比較的低く押さえられている上に、建物が池を隔てて奥に配置されているため非常に落ち着いた雰囲気のたたずまいになっています。
またロビーからセットバックしてバンケットホールが重なって見える立面は完璧な比率のスケールバランスで構成され奥行きと安定感を感じさせます。
逆に反対側の東端バンケットホール側は、キャンティレバー構造(片持ち出し)を織り交ぜながら一気に建物が28mの高さまでせり上がっていますので力強い男性的な表情を見せていて、当時としては非常に高い建物という印象を与えていたものと思われます。
<客室棟>
北側は先回でも取り上げましたが、みゆき通りに面して客室棟が配置されています。
昭和30年代当時、有楽町で電車を降り、山手線沿いに狭い道路を歩いてみゆき通りに出ると右側に視界が開けますが、ここで濃い茶色の帝国ホテルの客室棟を左に見ながら、その奥に日比谷公園の緑が見える景観は今でも鮮明に思い出されます。
中央棟と客室棟の間には中庭が配置されていました。この中庭や中庭方向から見たダイニングルーム、バンケットホールの写真は殆ど見られません。
完成時の貴重な写真が「旧帝国ホテルの実証的研究」に掲載されていましたので紹介させて頂きます。
<日本人だけで建設された南側の客室棟>
なおライトは中央棟と北側客室棟の完成を見届けてから帰国しています。ホテル側といろいろトラブルがあり、南側の客室棟は北と同じだから、日本人の技術者だけでも出来るからという判断だったようです。
全体を写したものではカラーの写真が少ないので建物の雰囲気を感じ取って頂けるのか心配ですが、帝国ホテルの規模の壮大さを少しでもお伝えできればと掲載 させていただきました。
写真はいずれもこれまでと同じく明石信道氏の「旧帝国ホテルの実証的研究」から拝借させていただきました。
次回は最終回ですがこの建物の大きな要素であり、我々タイル業界にも影響を与えてきたレンガについて詳しく取り上げます。
筆者:株式会社TNコーポレーション 顧問 横井由和