時代を逆行する試作


こんにちは、試作室の冨田です。
最近は流行りの技術、AIについてのご紹介をさせていただいたりしていますが、タイル試作や開発ももちろんCADや3Dプリンターなどの活用が進んできています。とても便利な時代になりました。
しかし、今回は時代の流れに逆らうかのような全て手作りで行う試作について、制作過程と共にご紹介しようと思います。









私が開発時に活用するのは主に粘土と石膏です。今回は和風で装飾的なアクセントになるようなタイルの制作しています。
大きなテーマが決まったらノート上で単語の連想ゲーム、色と連なりのイメージからデザインを選定し、モデルを作成していきます。
最初から石膏で作っておくと、無問題であればそのまま原型にできてよいのですが、今回は凹凸加減を検討したかったので粘土で作成しています。





高さにバリエーションを出して釉薬の表情の変化を引き出したい、、




モデル完成後、凹凸のさじ加減、連なりの見え方、釉薬との相性などの検討のため少量の量産が必要となります。この時、プレス機のフレームがない場合、簡易の型を石膏で作成します。
石膏型の細かい作り方は以前もブログで書いているので割愛します。ワークショップの『型の作り方』という記事でご紹介しています。石膏の性質や使用方法について書いてありますので、よろしければご覧ください。





 ブログ『型の作り方』 https://tile-park.com/blog/detail/25818







⑴粘土原型に油をぬる






⑵フレームに離型剤をぬって石膏を流す








⑶石膏がやわらかいうちに針金をさして空気穴をあけておく






⑷原型を外し、型を掃除して乾燥させる






石膏型が完成したら、素地を生産していきましょう。
まず、型に粘土を叩き入れます。少量なら手でもよいですが、今回は量が少し多いので粘土を布にくるんだもので叩いています。
粘土が型に隙間なく詰まったら、はみ出たところをならしていきます。型抜きの最初の方は石膏の水の吸いがよく、ならしているときに素地が引っ張られて剥がれやすくなっています。形や面に支障が出ないように、片手で抑えながら、優しく手早く余分な粘土をそぎ落とします。
綺麗に詰め終わったら型を三十分位ひっくり返して置いておくと、石膏が水を吸い、固くなった粘土がぽろっと型から出てきます。これを繰り返して成形していきます。石膏型は粘土の水を吸わせるたび、吸水率は下がり、量産の効率は落ちていきます。途中で型を休ませてあげながら形をとっていきます。







⑴粘土のつなぎ目が素地の”面”に向かないように詰める






⑵力加減がミソ








⑶伏せて置いておくとぽろっと










⑷完成 よれたところはこの時直してあげる






生地が揃ったら、乾燥させて施釉をします。今回は和を感じる流れる釉薬です。







個人的なこだわりで面にやや複雑な勾配を付けています。
亀みたいでかわいい、、






もう少し線の見え方の差がほしい気がする、、








釉薬の厚みに差を出して検討












試作ができたら持ち寄って会議で揉んでもらいます。デザイン、柄の方向性について、量産の問題、釉薬との相性、、いろんなご意見をいただきます。
現物をみて、検討した後、デザインを確定修正し、原型を作成します。





タイルの魅力は計算されたシンプルでクールなデザインで、それらが空間を引き立てる、というのはわかってはいるのですが、今回はお題が『和』ということもあって少しねちねちした作り方をしてみました。(きちんと、くどい、というご意見をいただきました!)
一般的なタイルの淡白さ、洗練されたデザイン、もちろんとても美しいと思います。
ただ文化としては海外が主流で、そういった魅力を持っている分、『和』をテーマにするのであれば、日本にしかできない微妙な差異を大事にした見え方、ある種タイルらしさと反対に行く部分があってもいいのかな。微妙な色の深みや軌跡から「味」を感じられるようなタイルが増えたら、もっと日本とタイルが近くなるのではないかなと、個人的に思っています。
さわりながら、形を感じながら作っていく、時代に逆らうような方法ですが、試作はこんな作り方もできます。
「手でつくり、手で考える」試作のご紹介のでした。
ご意見ご感想などいただけると嬉しいです。





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