下地、接着剤、目地材。施工の基本はこの3つ!


TNコーポレーション社内にて毎月開催されている「タイルの基礎知識 勉強会」も第5回目。半年をかけて全6回予定でいろいろ学んできましたが、そろそろ最終章を迎える…はずだったのですが、好評につき(?)延長回が追加。
ここからはしばらく、まったくの未知の世界…「タイルの施工」について学んでいきます。









今はほぼ接着剤で張ってます!


タイルを施工するにあたって必要となるものは3つ。「下地」「接着剤」「目地材」これらが揃ってはじめてタイルを張ることができます。
まずは内装の壁への施工から―。





内装の壁には、2つの工法
●接着剤張り
●積上げ張り


内装の壁に張る場合は大きく分けてこの2つの工法があるのですが、現在ではほぼ100%が「接着剤」で張っているのだそうです。









かつては「積上げ張り」が主流だったのですが、なにしろ難しいらしく熟練の技が必要とか…。
「積上げ張り」は「だんご張り」とも呼ばれ、モルタルを団子のようにたっぷりとタイルにのせて、施工する壁に押しつけグイグイっと押し込んで張っていく方法。張っていきながら”平面”を自分で出していかなくてはならないということで、とても難しいようです。
技能五輪で「タイル張り」の技術を競い、世界大会もあるみたいですよ。ちょっと見てみたいですね!

ちなみに積み上げ張りは150角ぐらいまでのタイルでやっていて、あまり大きいものだと、たっぷりのせた団子(モルタル)が落ちてしまってダメ、ということでした(笑)
それにくらべると接着剤は作業性がよく、いろいろな下地で使えます。










内装の壁には、2種類の下地
●ボード下地
●モルタル下地
(ブロック・コンクリート造)


大きく分けると基本的にはこの2つ。
内装壁ではほとんどの場合ボード下地のところが多いのですが、施工場所によって使われるボードの種類もいろいろ変わります。

・石膏ボード
・シージング石膏ボード
・耐水合板
・珪酸(けいさん)カルシウム板(ケイカル板)
・デラクリートセメントボード









表は代表的な事例を挙げたもので、実際の水がかりの程度を考慮してボードの選定をします。

水を使わない場所はよくある「石膏ボード」、浴室などには、耐水性・耐久性に優れたデラクリートセメントボード(外壁にも使われる)…というように、実際の水がかりの程度を考慮して、それに対応したボード下地が使われています。





シージング石膏ボードとは
石膏ボードの両面の原紙および芯のせっこうに防水処理を施したもの。 湿度、温度による伸縮、変形が少ないので、「アバレのない下地」としてタイル接着工法をはじめ、各種下地として優れている。 台所、洗面所などの室内の壁、天井の下地材として使用




耐水合板とは
耐水性を持たせた合板のこと。合板の接着強を保証するため、耐水性能によって、JASの基準が設けられている




珪酸カルシウム板とは
水酸化カルシウムと砂を使って成型した板材。主に耐火断熱材として用いられ、鉄骨の耐火被覆としても重要な材料。比重も軽く施工性も高いことから、軒天など様々なところに利用される




モルタル下地もまた、常に水がかかるような場所などに使われます。
タイルの目地から頻繁に水が入ってきてしまうようなところには、先ほどのセメントボードやモルタル下地にします。


ところでモルタルって?
「土間はモルタル仕上げで!」なんて聞くと、セメントを塗って仕上げたコンクリートみたいなあんな感じかな…?って、なんとなくイメージはわきますが、モルタルとコンクリートって、全然違うものらしいです。
ちなみにモルタルもコンクリートも、材料としてセメントを使っているのですが…

モルタル → セメント 1:砂 3
コンクリート → セメント 1:砂 3:砂利 6

が通常の割合だそう(作業内容によって調整要)。
モルタルはセメントと水と砂を混ぜたもので、このモルタルにさらに2~3cmの砂利を混ぜて強度を上げたものが、コンクリートです。
コンクリートは強度が高いので建物の構造材など向け、一方モルタルは柔軟性と装飾性が高く、建物の表面部分に使用されることが多いということでした。





下地の厚さは? タイルの厚さにも注意
施工場所による下地の選定方法をみてきましたが、ボード下地には厚さの基準があるようです。

・石膏ボード → 厚さ9.5mm以上(9.5mm、12.5mm、15mm、21mm、25mm)
・合板 → JISⅠ類以上、厚さ9.5mm以上
・珪酸カルシウム板 → 厚さ6.0mm以上、比重1.0

耐久性に優れたセメントボードに関しては特に使用基準はないのですが、タイルの厚さが15mmを超える場合、基本的に石膏ボード下地は適していません。
“石膏ボードは、23kg/㎡以下の商品を新築に施工する場合に限り可”など、厚みで言ったり重さで言ったりと、メーカーによって推奨基準は様々だったりします。
厚いタイル=重い、大判タイル=重い…というわけで、600×300のような大きくて重量のあるタイルも石膏ボード下地はおすすめできません。









石膏ボードは、石膏を芯材に使用し、両面を石膏ボード用原紙で包んで板状に成型したもので、表面は紙なのです。重たいものがくっつくとその重みで剥がれてきてしまう可能性があります。

300角以上のタイルを壁に施工するときは弾性接着剤を使い、さらに3m以上の高いところでは、金具を併用して施工します。
弾性接着剤で張ることで、構造躯体からくる変形に対する追従性が高くなり、剥離の危険性も低くなると言うことだそうです。





躯体(くたい)とは
建物の骨格部分を指す言葉で、具体的には基礎、柱、梁、壁面、床などが躯体に含まれる




いろいろと書きましたが、タイルパークでは接着剤等は残念ながら取り扱っておりません…。(さきほどの、大判タイルのときは”弾性接着剤を使う”ということや、特殊なもの(ガラスタイルなど)に関してはセメダインさんの商品を 一部 推奨してはおります…)
100角くらいまでのタイルなら、タイル張りの職人さんが自分が扱いやすい接着剤を使っていることが多いそうですよ。










内装の床には、2種類の張り付材料
●有機系接着剤
●樹脂モルタル


今では樹脂モルタル(砂・セメント+樹脂を混ぜて強く固まる)を使うことはほぼなく、接着剤がほとんど。床は踏まれる度にしなるので、しなりを吸収してくれる弾性接着剤がおすすめだそう。









内装の床の場合は、1つ床を底上げしてからその上に下地を、さらにその上にタイルを張ります。

例えば…
コンクリート造の商業施設ビル、コンクリートの上に直接タイルを張ったりはしません。入っている店舗が変わり、タイルを張り替えるときに、直接貼っていたら剥がすときに傷つけてしまい、改装のときに困ってしまいます。なので必ず1つ床を底上げしています。
住宅も、土間より上がった廊下やリビングは、基礎があってその上に根太(ねだ)があって、その上に下地、そしてタイルの順になります。

下地は合板ならば12mm以上。合板が薄いとたわんでタイルや目地が割れてしまいます。強度が確保できる合板の厚さが必要です。下地の精度が仕上がりに直結してくるので要注意。
しっかりとした下地と、接着剤も弾性接着剤が準備できると安心ですね。

そして一番の心配は、やはりタイルが割れてしまうこと…。そこの不安をなくすために準備はとても大事!
接着剤も安いやつを使ってしまうと、水がかかるとふにゃふにゃになってしまったり…。
“エポキシ樹脂系”の接着剤が、強い接着力で、耐水性や耐熱性、耐薬品性にも優れ、耐久性があっていいそうです。
地域によっても、また季節によっても使う接着剤をかえていたとか。夏用、冬用。。。寒くてもそんなに硬くならないものとか…あるみたいです。ちなみに暖炉は直火じゃなければそんなに影響はないそうですよ。










外装の壁には、3つの工法
●外装有機系接着剤(弾性接着剤)張り
●圧着張り
●モザイクタイル張り









圧倒的に多いのは下の2つ。
「圧着張り」はモルタル下地と、張り付けにもモルタルを使ってタイルを張ります。作業性も良く、そして安い!気候と(寒いと表面凍るとか…)、職人さんの腕にも左右されやすいので要注意(笑)。あとモルタルは目地詰め必須です!入れないとタイルが落ちてきてしまいます。

これよりも安全性を高めた「改良圧着張り」という工法もあります。こちらはタイルの裏面にもモルタルを塗りつけて、張り付け側とタイル側とでダブルモルタルでガッチリ張り付けます。

「モザイクタイル張り」も基本的には同じ。モルタル下地に張り付けモルタル塗って張りますが、ユニット化されているので作業効率がよいです。場合によっては直張りも可能(下地の精度が重要)。

「モザイクタイル張り」の改良版で「マスク張り」というのもあって、目地部分をマスキングしてから張り付けモルタルを塗り、マスクを外し目地部分以外にモルタルがのっている状態で張り付ける方法も。
「モザイクタイル張り」では、張り付けモルタルを塗り付けた後、タイル張りまでの塗り置き時間が長くならないよう管理が大変でしたが、「マスク張り」はその影響による接着力のバラつきを少なくし、良好な接着力が得られる利点があります。





有機系の接着剤張りですが、先述の内装の床でも少し触れましたが、固まってもある程度柔軟性のある弾性接着剤は、下地の収縮や地震の揺れにも強く、追従性に優れています。価格は高いですが、高性能で安全性が高いことから最近ではよく使われるようになりました。

他の工法では、目地を詰めることで強度を出していたのが、その強力な接着性は空目地や深目地なども可能とし、意匠性も広がります。
表面に凹凸があったりして塗り目地ができず、一本目地(絞り袋でクリームを絞るようにゆっくりと目地部分に詰めていく)で仕上げないといけなかった様なものでも、弾性接着剤を使えば「貼るだけでOK」になったのです。

全国タイル工業組合で、外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度「Q-CAT」という仕組みもつくられました。

そんな注目の弾性接着剤ですが、あまり大きなタイルはダメで…、300角以下(JASS19)となっています。
300角より大きなタイルは、弾性接着剤と併用して金具ささえるなど対策が必要です。各メーカーさんで推奨しているものがあるようなので、調べてみてください。(再:タイルパークでは接着剤などの施工関連用品は取り扱っておりません…)










外装の床も、3つの工法
●圧着張り
●セメントペースト張り
●大型床タイル張り


広い面積への施工もしやすく、もっとも一般的なのが「圧着張り」。(先述の外装壁と同じです)









「セメントペースト張り」は敷きモルタル、通称バサバサモルタル(笑)を使います。砂に少し水分が入ったような感じのバサバサしたモルタルを、下地にも、張り付け材としても使用
バサバサモルタルが硬化する前に水分の多いしゃびしゃびのセメントペーストをかけて加工します。締まろうとするバサバサモルタルとセメントを含んだ水分が一緒になってかたまっていきます。





少々長くて疲れましたね… (しかもちょっと難しい)
あと、”目地材”についても少し教えていただいたのですが、また次回にします!










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